今日も明日も、マリリン日和

センター負傷棟から救出された雑種犬、マリリン。車いすを軽快に乗りこなすマリリンと、夫と、私。家族の日々の記録です。

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動物愛護センター 5

前回の続きです。

今日で、シリーズ最終章。

祈りを込めて、最後まで綴りたいと思います。




迷子犬の対応、センター収容後の段取りについては、前回までに書きましたので、最後は、飼い主等による持ち込みの場面を考えてみたいと思います。

先生は、飼えないと持ち込んできた飼い主に対し、説得に応じない場合、必ずこう言うそうです。


「どうしてもと言うのなら、木曜日の朝、連れて来てください。

木曜日の午前中に、遺体の収集車が来るんですよ。

連れて来られた犬を朝のうちに処分し、そのまま遺体を運んでもらいますから。」


センターからこのように言われても、平然と連れてくる飼い主もいると言うのだから、感情のある人間とは思えません。

里親探しの努力もせずに、命を放り出す飼い主は、殺処分されていく様子をその目で見ればいい、と思います。




ちなみに、ブリーダーによる持ち込みはどう対処しているかお聞きしたところ、基本的には断っている、とのことでした。

ブリーダーだと確実に判断できるとは限らないけれど、引取申請書と一緒に身分証明書の提示があるため、そういったところをきっかけに判明した場合は、拒否するそうです。




ここで、引取りに関する法的根拠について。

私たちがセンターを訪れた2月当時は、まだ改正愛護法が施行されておりませんでした。

よって、動物愛護法第35条第1項に、「所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない」と定められておりました。

この規定により、これまで行政は引き取ってきたのです。

引取りの際に、私たちの市では、手数料として2000円をとっていますが、これについても、そもそも「引き取らなければならない」と法律が定めているのに、手数料をとっていいのか、といった問題があるようです。

これは、自治体によっても、意見が分かれるところだとか。

私たちの市では、実費分として、2000円だけをとっている状況です。

けれど、何か矛盾していますよね。

飼い犬が迷子になってセンターに収容され、飼い主がその返還を求めた際に支払う手数料は、3500円、飼養管理費が一日につき500円発生します。

それよりもセンターに持ち込む場合の手数料のほうが安いなんて。

先生も、「個人的には、この矛盾に腹が立って仕方がないし、納得がいかない。」とおっしゃっておりました。



で。



この動物愛護法第35条第1項。

ブログでも何度か触れてまいりましたように、9月1日から、改正愛護法施行により、「引き取らなければならない」という文言が、変更されました。

動物取扱業者から引取りを求められた場合のほか、一定の条件のもと、引取りを拒否できるようになりました。



こうして改正という前進を遂げたことは、素晴らしいことだと思います。

ただ、やはり、これだけでは、根本的な解決は難しい。

先生に、私たちの個人的な懸念をぶつけてみたところ、「まさに、それが問題なんです。」と身を乗り出して、おっしゃいました。



先生も、今回の改正にあたって、何度も会議に参加したそうです。

そこでは、各自治体の熱意ある職員さんが、力を合わせて、懸命に訴えていたようです。

「拒否したところで、一度捨てに来た飼い主が改心して飼うとは思えない。

拒否したら、ほかの場所で捨てられる犬猫が出て来るだろう。」

みなさん、それを最も懸念されているようです。

何度も何度も意見を出してきたけれど、結局、今回はこの改正で落ち着いてしまったとのこと。

今後、引取りを上記の理由で拒否する場合には、同時に、里親探しのアドバイスを精いっぱい行っていくとおっしゃっておりました。

もう一歩というところですが、とは言え、こうして明文化されたことで、センターの職員さんたちが、無責任な飼い主に対し、これまで以上に厳しい指導がしやすくなりました。

その点では、各自治体とも、引取り数の軽減、ひいては殺処分数の軽減に向けて取り組みやすくなったのではないかと思っております。

今回、こうして改正がなされたことだけでも、大きな一歩と考え、将来への希望を持ちたいと思います。





引取りについての補足事項をひとつ。

収容された犬猫について、センターから動物愛護団体に引取りをお願いすることも多々あるそうなので、その法的根拠を書いておきたいと思います。

動物愛護法第35条第6項

「都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする団体その他の者に犬及び猫の引取り又は譲渡しを委託することができる。」

この法律のおかげで、所有権の問題を回避して、愛護団体さんにお願いすることができます。

このように、たくさんの方々が、動物たちの命をつなごうと、身体を張ってくださっております。




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最後に、負傷動物についてのお話に入りたいと思います。



マリリンのことがありますので、負傷動物の措置については、私たちがとても知りたいことでした。

負傷動物に関する規定は、3回目の記事で触れました「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」の告示に定められております。

この告示の第2という項目に、負傷動物に関する記載があり、第1の3から6までの規定が準用されています。

第1の6には、次のような規定が定められています。

「都道府県知事等は、法第35条第1項本文又は第3項の規定により引き取った犬又は猫について、必要に応じて治療を行うこと。ただし、治療を加えても生存することができず、又は治療することがかえって苦痛を与え、若しくは長引かせる結果になる場合等、死期を早めることが適当であると獣医師又は都道府県知事等が判断した場合にあっては、この限りでない。」

この定めを根拠として、所有権の問題を回避し、必要と思われる治療行為を、引取り後すぐに行うことができます。



どの程度の治療をするのか。

前にも少し触れましたが、やはり予算の範囲内、つまりセンターに常備された薬品を使い、センターにある設備でできる治療のみです。

いわゆる、応急処置程度。

多数の菌に効果がある抗生物質などをよく使用しているそうです。



市内の動物病院に治療を委託することがあるか、とお聞きしたところ、それは一切ない、とのことでした。

動物病院にお願いすれば、治療費として、税金を支払うことになってしまうからです。

たとえば、横浜市では、獣医師会と委託契約をしていて、治療費5000円までを市が支払う規定があります。(2月当時の話です)

5000円以上の治療は、獣医がボランティアで行うことがあるとのこと。

横浜市は、人口も面積も大きく、職員だけでは対応しきれないという事情もあるようです。

私たちの市の場合は、一番遠い場所でもセンターから1時間半で行かれることもあり、自分たちですべてやっているのが現状、とのことでした。

例外的に、負傷動物を保護した人が病院に連れて行き、善意で治療費を支払ってくださったり、保護されて動物病院に運ばれた負傷動物を、獣医さんがボランティアで治療行為をしてくださったり、そういったこともあるようです。



このように、センターの獣医さんや様々な方の善意により治療をしてもらった犬猫ですが、ある程度傷が治ったあとは、通常の引取りの流れに乗ります。

つまり、譲渡か、殺処分。

痛い思いをして、命をつなぎ、やっと元気になった子です。

それなのに、殺処分になる可能性も少なくないのですよね。

マリリンが殺処分される前に引き出してくださった愛護団体の方々に、心から、本当に心からの感謝を申し上げたいと思います。



以上、負傷動物についてのお話でした。




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先生とのお話も、これでおしまいです。

最後にひとつだけ、たずねました。

「マンパワー不足を感じるのは、どんなときでしょうか。」

この質問は、最初から用意していたものではありませんでしたが、先生のお話の中で何度かポイントになったところでしたので、改めてお聞きしたのです。



以下、先生のお話です。



「マンパワー不足は、常に感じています。

本当は、動物のためにできることを、全部やりたい。

けれど、自分たちの手では、やりきれないことがたくさんある。

それが、とても悔しいです。

また、啓発活動にも、もっと力を入れたい。

迷子札や鑑札の啓発、迷子になった場合の探し方の啓発。

それに、動物を飼うということや、命を大切にするということをテーマにした、小学校の愛護教室もやりたい。

小さな頃からこういった啓発をしていくことがいかに重要であるか、この現場にいると、よくわかる。

だからこそ、教育のほうにも力を入れたいが、現状では人手が足りません。」



日頃から胸にため込んでおられる悔しさが、一気にあふれ出すようでした。



すべてを終え、先生に心からのお礼をお伝えし、もう一度ふれあい犬とふれあってから、私たちはセンターを後にしました。





以上が、自分なりにまとめました、センターのご報告です。





私たちは、これまで、保健所・センターのことを調べる中で、狂犬病予防法などの古い法律に縛られている現実から、こう思っていたのです。

保健所やセンターは、人間のためにあるものではないか。

人間のために、動物を管理するのが目的なのではないか。

しかし、それは間違いでした。

少なくとも、私たちが訪れたセンターの理念、また、職員さんたちの中にある思いは、動物にも人にも向いています。

悲しい思いをする動物がいなくなること。

動物のことで困っている人がいなくなること。

そのために、懸命に命と向き合っておられました。




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これで、愛護センターのシリーズは、おしまいです。

長い記事を最後まで読んでくださった方、本当に、心から感謝申し上げます。

私には、書くことしかできません。

マリリンとの愛おしい日々を伝え、保護犬との生活の素晴らしさを宣伝し、そして、自分が知り得た動物たちの現状を、このように発信することしかできない人間です。

記事を書き残しておくことで、後々、何かの形となってくれるのか、それとも、何の意味も持たずに終わるのか、わかりません。

それでも、きっとどこかにつながってゆくのではないかと信じ、このシリーズを綴りました。

動物と人間が共生できる社会へ。

祈りを込めて。




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次回の更新は、水曜を予定しております。

あと2回となりました。

よろしければ、見に来てやってくださいませ。


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動物愛護センター 4

前回の続きです。

シリーズは、今回を入れて、あと2回となりました。

もうしばらくのお付き合いをよろしくお願い申し上げます。




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今回は、猫のお話です。



先生は、「まず最初に・・・」と、前置きを始めました。

「犬と猫では、不幸になる背景が違います。

それを混同して議論する人がたまにいるのですが、犬と猫は問題を分けて考えたほうが良いと思います。」



以下、先生のご説明です。



現在、私たちの市では、犬は、ほとんどが飼い犬の問題です。

数年前までは、野犬や野良犬がかなり多くいました。

しかし、センターができた当初、まず野犬対策に相当な力を入れたのです。

2~3年後には、今のように、野犬や野良犬はほとんど見かけない状態となりました。

よって、現在、問題が生じるのは、飼い犬もしくはブリーダーの繁殖犬。

ブリーダーに対しては、行政としては、定期的に、または苦情等があった場合、抜き打ち検査を行っています。

状況によって、指導、勧告、命令を出すことがあります。

(ただ、これは先生のお話から受け取った私の主観ですが、実際には、勧告程度が多く、悪徳ブリーダーが決定的なダメージを受けるほどの厳しい措置は取りづらいのが現状のようです。)





飼い犬の問題に対しては、まず第一に、迷子犬を減らすことと、迷子犬の返還率を上げること。

迷子犬を減らすにあたっては、鑑札や迷子札の啓発。

それらを犬につけておくことがいかに大切であるかを、広く市民に知ってもらうこと。

また、犬の探し方の啓発も、重要です。

迷子になった犬をどこに問い合わせればいいか、どうやって探したらいいか、その方法を知らない飼い主は多い。

迷子になったら、まずはセンターに連絡をすること。

市外で保護された場合はセンターに情報が入りにくいので、警察署や近隣自治体にも連絡をしておくこと。

それらの啓発に力を入れています。

また、迷子犬の情報がセンターのホームページや自治体の掲示板に載っていることも、広く知ってもらう必要のある事柄です。



と、ここで。

夫が、口を開きました。

「鑑札って、あのデザインとか素材とか、もう少しどうにかならないものでしょうか?

デザインなどが変われば、つけるようになる飼い主も増えるかもしれない、と思ったのですが。」

先生は、たははと苦笑し、「いや~、それは確かにおっしゃる通りなんですよね。」と頭をかきます。



「ただ、すべてを税金で行っている以上、我々職員が要望したところで、その力はとても弱いのです。

なので、ぜひ、市長にご意見をメールしてください!

市民が要望しているとなれば、話は変わってきますから。

すべてにおいて同じことが言えるのですが、要望があったら、どんどん市長に送ってください。

こうしたほうが良いじゃないか、と当然のように感じることであっても、職員が言ったところで、どうにもならないんです。

ぜひ、市民のみなさんのご意見をください!」



市長に直接メールを送るという発想が身近になかった私は、あぁ、なるほど!と膝を打ちました。

確かに、税金で仕事をしている以上、市民の要望がなければ行政も動かない、いや、動けませんよね。

すぐに、税金を勝手に無駄遣いした!と言われるわけですから。




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話を戻します。

以上のように、犬については、ほとんどが飼い犬の問題。

一方、猫の場合はどうかと言うと、ほとんどが野良猫の問題なのだそうです。



いま必死に生きている彼らの命も守らなければならないけれど、並行して、これ以上悲しい思いをする命が増えないようにしなければ、いつまでたっても同じ事の繰り返し。

食べ物をあげるなら、それと同時に、不妊・去勢手術を。

それを、強くおっしゃっておりました。



市では、野良猫の手術費用の助成金を交付しています。

平成25年度分は、10月をもって予算に達してしまい、受付は終了しましたが、来年度また予算が組まれる予定で、改めて受付を開始するそうです。

原則として、1世帯あたりの制限はありません。
(申請状況等により、個別に制限をかけることはあります)

この助成金は、あくまでも、「野良猫」の手術に交付されるものです。

飼い猫の手術をするのに助成金をくれ、と言ってくる人が少なくないそうで、その話に唖然としてしまいました。



ここ最近の、一年間の猫の収容数の内訳は、以下の通りです。


・保護(迷子や、拾得者からの引取り)・・・735匹

・負傷・・・64匹

・引取り(所有権放棄)・・・106匹

ほか、譲渡後返還など。

合計、900匹程度の猫がセンターに収容されます。



その猫たちが、どうなるのか。

以下、内訳です。



・飼い主返還・・・7匹

・譲渡・・・158匹

・殺処分・・・334匹

・病気などによる死亡・・・405匹

ほか、申請取下等。



犬との違いが顕著なのは、収容後に病気などで死亡する数です。

これもやはり、猫の問題がほとんど野良猫の問題であることによります。

野良猫が妊娠し、生まれた仔猫が大量にセンターに持ち込まれます。

繁殖シーズンなどは、毎日たくさんの仔猫が連れて来られるそうです。

そういった事情から、センターに来る猫のほとんどが、仔猫。

生まれたばかりの仔猫を、自力で生きてゆけるまで育てることは、とても難しい。

付きっきりで面倒を見て、細心の注意を払わなければ、その命は力尽きてしまいます。

ましてや、ここはセンター。

センターに運ばれる仔猫というのは、すでにその時点で弱っていることが多く、健康な仔猫はとても少ないそうです。

冷暖房は24時間完備されているものの、仔猫たちを育てる環境が整っているわけではありません。

多くの仔猫が、病気などで命を落としてしまいます。

愛護団体さんには、仔猫を育てるベテランの方もいらっしゃるので、その方々にお願いして育ててもらうこともあるようですが、繁殖シーズン中は、ボランティアさんも手一杯。

やはり、すべての仔猫を助けることは、難しいようです。



生き抜くことができた仔は、その後、譲渡対象になります。

問題は、生き延びることが難しい仔たちの、運命。

弱っている仔猫の生死の見極めが重要だ、とおっしゃっておりました。

生死の見極め・・・いわゆる、処分か、衰弱死か、ということです。



職員の方々は、仔猫が生き延びることができるよう、最大限の力を尽くします。

ボランティアで24時間体制の世話をする場合もあるようですが、繁殖シーズンなど、それも限界があります。

やまを越えれば、この先も生きてゆかれる可能性がある。

しかし、やまを越えられなければ、苦しみながら、息絶えることになる。

毎日のように、それを見極めなければならないそうです。


「処分か、衰弱死か・・・。

仔猫にとって、どちらがいいのか、私たちには分かりません。」


先生は、おっしゃいます。


「仔猫に聞いてみない限り、誰にも分かりませんが、ただ、やまを越えられず衰弱死する可能性が極めて高い仔猫の場合においては・・・。

ひとりぼっちで苦しみながら時間をかけて死んでいくより、見守られながら短い苦しみで死ぬほうが、まだましなことではないかと考えているのです。」


見極めは、その日担当している獣医さんに任されているそうです。

獣医さんが、見極めをし、このままにしておくことができないと判断した仔猫について、処分を行います。

仔猫の処分は、麻酔を使用することが多いようです。

やまを越えられるか、越えられないか。

その判断にかかる辛さは、相当なものであると思います。


「いつも、ずっと、悩みながら、業務を行っているんです。」


先生は、静かにおっしゃいました。



仔猫を苦しませないために、処分の数が増える場合もあるでしょう。

当然センターとしては、出来る限り「処分数」を減らしたいのです。

最近は、殺処分について、世の中から厳しい目が向けられています。

しかし、処分数を減らすということは、「死亡数」が増えるということ。

苦しんで衰弱死する仔猫の数が増えるということです。

「死亡数」については、厳しい目は少ないですから、体裁としてはそのほうが良いのだと思います。

けれど、獣医さんたちは、数は気にせず、しっかりと仔猫の状態を診て、とにかく苦しみが少ないと思われる選択をするよう、力を尽くしておられます。

余計なことは考えず、目の前の仔猫のことだけを考えて、行動する。

そして、だからこそ、とても悩み、苦しむそうです。



「基本的には、生き延びるほうの道を探ります。

なので、生き延びる可能性にかけ過ぎて、見極めを誤ることもあるんですよね。

やまを越えられると判断し、翌朝、その仔が死んでしまっているとき。

後悔するんです。

なんで、苦しまないうちに処分しなかったんだって、思うんですよね。

おなかすいてたんかなぁ、寂しかったんかなぁって・・・。

・・・どうしようもない気持ちになるんです。」



この仕事を経験したことなどない私たちには、何ひとつ言葉を発せられませんでした。

処分しなかったことを後悔する。

極限でしょう。

ここで働く方々が、精いっぱい命と向き合っていること、そのあまりに過酷な現実を、私たちは、しっかりと見つめなければならない。

そう思いました。




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次回は、最終章。

マリリンにも関係する、負傷動物のお話に触れたいと思います。


| 愛護センター | 07:35 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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動物愛護センター 3

前回の続きです。

前回は、センターに収容される犬の内訳や、殺処分の方法について書きました。

動物と暮らしたことのない方々からも、たくさんの反響をいただいております。

少しでも多くの人に知っていただくことができれば、本当にありがたいです。



今日は、法律の話をベースに、動物のことを考えていきたいと思います。

殺処分の記事は読めなかった、という方々も、今回は読んでいただける内容ではないかと思っております。




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まずは、迷子犬が保護された場合の取り扱い。



これは、狂犬病予防法により処理をしています。

※ 狂犬病予防法は、主に捕獲された犬について、適用されます。
 (捕獲というと言葉があれですが、迷子の保護もこれにあたると考えられます)

  一方、動物愛護法は、主にセンターに持ち込まれたり、引取りを求められた犬または猫について、適用されます。



迷子犬が保護されると、最初に、近隣自治体の保健所などに問い合わせ、所有者から届け出が出ていないかを確認します。
(直近3か月分くらいは確認するそうです)

該当がなければ、ホームページや区の掲示板にて、5日間公示。

この5日間は、所有者がいる場合があり、所有権はその所有者に帰属するため、犬の各種検査はできません。

5日間が過ぎ、所有者が現れなければ、所有権が自治体に移ります。

そうなって初めて、その犬の健康状態について検査することができます。

血液検査等、各種の検査を行います。

そして、健康状態や性格など、あらゆる面を勘案し、譲渡対象となるか、殺処分となるか、判断します。

前回の記事で書きましたが、ここでの判断は、全獣医師の総意です。

病気など、多少の問題があっても、できるだけ譲渡の可能性を探ります。

そこにかなりの力を入れてらっしゃることは、先生のお話をお聞きしていて、痛いくらいに伝わってまいりました。



また、治せそうな病気であれば、治療をします。

とは言っても、税金の範囲なので、センター内にある設備や薬品で行うことのできる治療のみ。

よって、満足な治療とは言えません。

保護犬に多いフィラリアは、1回目の記事で触れましたように、注射による駆除のみ行っているようです。

時間をかけた治療をするには、それだけ収容期間がのび、治療費もかさみますから、その余裕はセンターにはありません。

注射による駆除は、犬の年齢、性格、フィラリア症の程度によっては、大変な危険がありますが、祈るような気持ちで、治療に臨んでらっしゃるそうです。

1回目の記事で登場しましたオムニちゃんも、もうおばあちゃんですが、この注射による駆除を耐え抜いてくれました。

こうして、治療を済ませた犬は、譲渡できれば譲渡となります。

けれど、治療をしても、家族に迎えてくれる人が現れなければ、処分となってしまいます。




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ここで、殺処分について、法的なお話を。

楽しくない内容かもしれませんが、一度こういったことを考えておくのも、意味のあることではないかと思います。



殺処分の法的根拠は、何か。

保健所・センターが殺処分を行うのは不当である、法的に根拠がない、と責められることがあります。

実際、このセンターにも、そういったご意見はよく寄せられるようです。

今回、根拠について、改めて考えてみました。

この先、シリーズの中で法的な話にあたる部分は、先生のお言葉ではなく、すべて私が勝手に調べた内容ですので、その前提でご覧いただければ幸いです。

決まり事として最も優先される「法律」に示されている規定から、順を追って探ってみます。





まず、狂犬病予防法。

所有者による引取りのなかった犬について、「処分することができる」と定められています。

ここで言う「処分」は、「殺処分」とは書かれていませんので、殺処分だけでなく、譲渡などを含めた意味の処分と考えられます。

また、処分することが「できる」なので、処分「しなければならない」わけではありません。



それでは、動物愛護法では、どうでしょうか。

35条に、「犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない」とあります。(後ほど書きますが、引き取らなければならない、という文言については、9月1日施行の改正法により変更され、引取りを拒否できるようになりました)

殺処分に関する条文は、やはりございません。

35条7項に、「環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、第一項本文の規定により引き取る場合の措置に関し必要な事項を定めることができる。」とあり、動物愛護法は、詳細をそちらに投げた形をとっています。

では、その措置とは?



それは、「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」という環境省の告示が、平成18年に出されています。
(平成25年に一部改正がなされました)

ちなみに・・・

国が定める決まり事としては、法律や告示、通達など様々なものがありますが、これらには、優先順位があります。

その順位は大まかに並べると、法律 → 政令・省令 → 告示 → 通達 といった順です。

法律が最も効力の強い決まり事。

法律で定められているものは、それがすべてにおいて優先しますし、法律で定められていない場合、その次の、政令や省令に書かれていることが優先します。

今回の措置というのは、法律でも政令・省令でもなく、告示にのみ定められているので、告示で定められたこの措置が、事実上優先します。



で。



この「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」という長ったらしいタイトルの告示に何が書かれているかと言うと。

第4 処分

保管動物の処分は、所有者への返還、飼養を希望する者への譲渡し及び殺処分とする。

と定められています。



おそらく、行政が殺処分の根拠としているのは、この規定ではないかと思います。

ただ、この規定は、殺処分を選択肢のひとつとして選べる、といったものなので、読み方によっては、保健所・センターの努力により、返還・譲渡の道だけを選択すれば、殺処分せずに済む、と言えなくもありません。



それと、もうひとつ議論になりやすいのは、期限の問題。

5日間、7日間など、殺処分されるまでの期限が定められている、といったことをよく耳にしますよね。

この期限については、根拠となる法令は存在するのでしょうか。



殺処分の根拠と同様に、法律 → 政令・省令 → 告示に至るまで、順を追って探ってみましたが、期限の規定はありませんでした。

告示にも定められていないとなると、その次に位置する自治体の条例では、どうでしょうか。

私たちの地域における動物に関する条例の中に、収容動物について記載がありました。

引き取った動物について、5日間公示するものとする、といった規定。

そして、その期間内に飼い主が犬を引き取らないときは、これを処分することができる、といった規定。

ここで言う「処分」は、譲渡なども含めた意味での「処分」と考えられるので、5日という期限を過ぎたら殺処分する、と定められているわけではありません。



となると。

「返還・譲渡・殺処分と3つの選択肢が示されているのだから、すべての犬猫について、殺処分以外の2つの選択肢でいけばいいじゃないか。

期限を決めてそれが過ぎたら殺処分するというのは、行政の怠慢だ。不当である。」

そういった意見が持ち上がり、保健所・センターが責められるのです。



確かに、と率直に思う部分も、ございます。

しかし、殺処分の全撤廃を、保健所・センターの職員さんだけに押し付けるのは、違うように思うのです。

行政の仕事は、すべて予算で動いており、また、保健所・センターによって、市長の理解や市民の意識を始め、取り巻く事情は本当に様々ですので。

殺処分にも税金はかかりますが、引き取った犬猫を保護し続けるということは、それ以上の大きな税金がかかります。

収容施設の環境や、何匹まで収容可能か、という問題もあるでしょう。

多くの保健所・センターでは、予算も人員も不足している中で、与えられた環境と条件のもと、必死に努力されておられるのではないかと思います。

行政において、予算の問題というのは、とても大きいです。

また、画期的な行政の取り組みを行おうとする場合、関係各署の協力が非常に重要な位置を占めているものと思います。

市長など一定の権限のある方が、どのくらい理解を示しているか。

そして、この件について積極的に動いてくれる議員さんはいるか。

とても重要なことです。

市長クラスの権限のある方が「やる!」と言えば、物事って一気に動くこともあると思うので。

逆に、権限のある方々が乗り気でない場合、画期的な取り組みは、なかなか難しい。

ですので、動物たちの問題についても、そういった関係各署の協力・バックアップ、また市民の意識の高さといったものが、大きな鍵となるのではないかと思います。



権限のある方々を動かし、条例改正や予算の獲得などにつなげるために、間接的に私たちにできることもございます。

ひとりでも多くの人に、現実を、正しい事実を、広めること。

多数の人にまず知っていただかなければ、現状を変えようがありません。

そして、動物に対する意識を高く持ち、私たちで世論をつくってゆくこと。

大きな世論にするためには、動物が苦手な方々を日頃から思いやるなど、地道な取り組みが大切です。

飼い主のマナー等をしっかり徹底することも、動物を守るために私たちができる事柄であり、また柱であると思います。



殺処分を行う機関という意味で、何かと敵意を向けられやすい、保健所・センター。

しかし、問題の本質は、殺処分ではないと思うのです。

そもそも、なぜ行政がこれほど多くの動物を抱えなければならないのか。

行政にすべての責任を問い、仮に殺処分をやめさせたところで、問題は解決しません。



殺処分をやめろ!とピンポンダッシュで言ってくる人は、山のようにいるそうです。

つまり、名乗ることもせず、メールや電話で一方的にまくしたて、去ってしまう人たちです。

本当に、職員の方々の日々のご苦労、心からお察しいたします。


「殺処分をやめれば、捨てられる動物がいなくなるのか。

そうじゃない・・・殺処分が問題なのではないと思うのです。

捨てられる動物たちがこんなにもいるという事実が、問題なのではないでしょうか。」


そうおっしゃる先生の思いに、私たちも共感いたします。

問題の本質は、殺処分ではありません。



もちろん、飼えなくなるには事情がある、という人もたくさんいるでしょう。

以前、「高齢者と犬」の記事でも触れましたが、最近は、飼い主が高齢であることを理由に持ち込まれる犬が、とても増えているそうです。

背景にどういった事情があろうとも、動物たちにとって、飼い主がいなくなるという事実に変わりはありません。

迷子だろうと、事情があって飼えなくなった場合であろうと、その命を何とかすることを、まず考えなければなりません。

そのために、センターも、迷子札の啓発などを行い、また、里親探しのアドバイスも行っています。

けれども、それを踏みにじるように、平然と捨てる飼い主もたくさんいます。

それらの人間に対し、センターの方々が必死な取り組みを行っていることは、言うまでもありません。

殺処分に対する敵意をセンターに向ける前に、私たちは、捨てる人間についての問題を、積極的に考えなければならないのだと思っております。




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「動物を捨てる人間には、必ずおそろしいことが待っています。おほほほほ。」




次回は、猫についてのお話です。




| 愛護センター | 07:40 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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動物愛護センター 2

みなさま、こんにちは。

応援してくださる方、いつも本当にありがとうございます。

心から感謝申し上げます。





前回の続きです。

今日から込み入った話になります。

しんどいですが、動物たちにとって、とても大事な内容だと思います。

つらい写真や動画を掲載することは、ございません。

想像力を働かせ、思考をめぐらせることで、はるかに強い印象をもって、意識の中に定着するものと思っております。

できるだけ感情的にならず、淡々と事実を綴ってまいります。

どうか、お付き合いくださいませ。





見学を終えた私たちは、2階の部屋に案内されました。




ここで、先生からお話を伺います。



まずは、センターの概要から。

職員数は、全員で15名。(2月当時)

管理職2名、業務職8名、そして獣医師5名。

管理職の方も、獣医師免許を持ってらっしゃるようです。

散歩、ごはん、動物たちのいるところの徹底的なそうじ、また健康管理など、動物の身のまわりのことは、1名の事務員さんと管理職を除く12名でまわしています。

動物のお世話以外の業務も山ほどありますから、みなさん相当ハードに働かれていることがわかります。

休日も、ローテーションを組んで、12名の方々が交代で動物たちのお世話をされてらっしゃるようです。




犬の収容数は、私たちが想像していたよりも、少なかったです。

この日、犬は、ふれあい犬を含め、10頭程度ということでした。

保護室に収容されている犬は、必ず1頭ずつ檻に入れているそうです。

きょうだい犬や、ずっと一緒に寄り添って暮らしてきた犬同士、といった場合じゃない限り、事故防止等の観点から、1頭ずつ収容しているとのことでした。




次に、収容数の内訳です。

2月当時における、ここ3年の平均としては、

・保護(迷子犬)・・・222頭

・負傷・・・7頭

・引取り(所有権放棄)・・・82頭

ほか、譲渡後返還など。

合計で300頭をこえる収容があります。



この中で、成犬は89%、仔犬11%

成犬が多いのは、都市部の傾向だそうです。

野良犬が少ないため、子どもがうまれることも少ないということでしょう。

いわゆる、「野犬」については、18年にセンターができた当初、相当力を入れて対応したため、現在はほとんどいないとのこと。

収容した犬の犬種の内訳は、雑種52% 純血種(ハーフ犬含む)48%



ただ、この保護された犬の数というのは、あくまでもセンターに収容された数です。

警察で一時的に保護され、飼い主に返還されるなどの数字は含まれておりません。

ブリーダーの倒産・崩壊、多頭現場の崩壊などで、愛護団体が直接レスキューに行き保護する犬たちもいます。

また、飼い主放棄の場合でも、放棄された犬を一般の方が保護することもあります。

そういった犬の数をすべて含めると、実際に市内で保護される件数というのは、もっと多くなるでしょう。




収容した犬たちがどうなったか。

同じく、ここ3年平均で、


・飼い主返還・・・99頭

・譲渡・・・94頭

・殺処分・・・111頭

・病気やケガによる死亡・・・10頭

ほか、申請取下など。


大体、毎年300頭近くの収容があり、その後の内訳は、飼い主返還・譲渡・殺処分で3分の1ずつの割合になっているそうです。




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次は、殺処分についてのお話。



本などを調べてもなかなか得られなかった部分を、今回はお聞きしたいと思っておりました。

先生は、細かな質問にも、丁寧に答えてくださいました。

途中からは、互いに話の呼吸がどんどん深まり、予定外の質問も飛び出すなど、少し踏み込んだ内容になったのではないかと思います。





先ほど書きました111頭の殺処分が、どのように行われるのか。

殺処分について話をする場合、前提として知っておく必要のある事柄だと思います。





このセンターでは、殺処分は1頭ずつ行っているそうです。

私たちは、様々な本やネットから、何頭か一緒にガス室に入れられると情報を得て、それを信じてまいりましたので、驚きました。



「1頭じゃないと、恐怖や苦しさで暴れたときに、ケンカになったりケガをしたりするでしょう? 死ぬときにまで、そんな思いはさせたくないんです。 死ぬときくらいは、せめて。」

先生は、ぽつりぽつりとおっしゃいました。



犬1頭1頭について、殺処分するか譲渡対象にするかの判断をするのは、「全獣医師の総意」。

特に、咬むなどの行為をする犬の場合は、判断が難しい。

最初に職員がかなり手強い目に遭ったとしても、それは、犬にとって、その職員がたまたま苦手なタイプの人だった可能性もあります。

一部の人間には心を許してくれる、というような場合もあるため、全員で検討するそうです。

もちろん、その時々の収容状況なども絡みますが、与えられた条件の中で、精いっぱいの判断をなさっております。

「決して、間違いはおかしたくないんです。」

先生は、はっきりと、そうおっしゃいました。

動物を殺処分する、という極限の業務の中でも、懸命に彼らが生きられる道を、みなさんで模索してらっしゃいます。




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続いて、殺処分の方法。

殺処分となった111頭の犬は、87頭がガス処分、24頭が麻酔処分となっています。(2月当時における、ここ3年平均)



<ガス処分>


ガス室に入れ、二酸化炭素を注入。

一酸化炭素などの強いガスを使えば、より苦しまずに早い段階で息絶えることができますが、それには問題があります。

危険な有毒ガスがわずかでも漏れ出たら・・・と考えると、とても使うことはできないそうです。

一酸化炭素は、本当におそろしい。

職員や、周辺住民の方々が危険にさらされたり、健康被害を被ったりする可能性のある方法は、行政としては採れません。



二酸化炭素は、はるか昔、人間が手術をする際の麻酔としても使われていたそうです。

いわゆる麻酔の作用というのは、投与後の状態が4段階にわかれます。



麻酔投与
 ↓
興奮期
 ↓
沈静期
 ↓
手術期
 ↓
深(しん)麻酔(過麻酔とも言う)



二酸化炭素だろうと、麻酔注射だろうと、麻酔の働きは決まっていて、どれもこの経過をたどります。

興奮期が最初に来て、その後、人間の場合だと強い頭痛を起こすこともあるようです。

興奮期がおさまると、沈静期に入ります。

そして、手術可能な手術期へ。

最後の深麻酔までいくと、息絶えます。



動画サイトに載っている、ガス室の中で犬たちが暴れている場面は、興奮期の状態を撮影したものと思われます。

興奮期は、約10分ほど続き、その後、身体が重く動かせなくなり、ぺたっとうずくまります。

そうなってから、20分程度で、死亡するようです。



こういったことから、先生方は、いかに「興奮期」を短くするかということに力を入れておられます。

二酸化炭素は、下に充満するため、立った犬の口もとのあたりは、濃度が薄くなり、その分、興奮期が長くなってしまいます。

つまり、下にたまってしまう二酸化炭素を、室内で均一にし、いかに早い段階で犬が沈静期を迎えられるようにするか、ということです。

ガス室の機械が古いものだと、空気のかくはんがうまくいかず、下にたまったままの状態になってしまうそうです。

このセンターの機械は、比較的新しいので、今のところ空気のかくはんがうまくいっている、とのことでした。

とは言え、もちろん、苦しまずに死ねるわけでは、決してありません。

何をどう努力しても、少し時間を短くできるだけのことであって、犬たちは、みな苦しみの中、息絶えていきます。




<麻酔処分>


最近では、麻酔による処分も少しずつ増えてまいりました。

鎮静剤を打って犬が落ち着いたところで、麻酔薬を注射し、死なせる方法です。

これも、決して安楽死というものではありません。



鎮静剤を投与した後、麻酔薬を注射します。
(鎮静剤は、麻酔とは違うので、これを大量に打っても死ぬことはできません)

その後は、先ほど書きました、4段階の流れをたどります。

ただ、4段階すべて合わせた時間がおよそ1分程度と、短い。

そういった意味で、二酸化炭素よりはまだましなのではないか、と考えられています。

麻酔薬の場合、呼吸停止が先に起こり、続いて心停止が起こります。

通常は、その間が1分もありません。

さらに、麻酔薬を心臓に直接打った場合は、もっと早く、数秒程度で心停止に至ります。
(心臓の左心房をねらって打ちます)



ただ、まれに耐性のある犬がいて、なかなか心停止の状態にならない場合があります。

そうすると、意識はあるけれど呼吸は停止している、という状態になり、それは犬にとっては、おそらくとても苦しい時間だと思います。

確認してみて、まだ心停止していなければ、急いで麻酔薬を追加投与するそうです。

麻酔薬に耐性のある犬かどうかは、打ってみないと分かりません。

だからと言って、高い麻酔薬を、毎回多めに使うわけにもいかないでしょう。

すべて予算に基く業務ですから、職員の方々の思うようにはできません。



このように、麻酔の量の判断が難しいことに加え、多少なりとも獣医師の技術にも左右されるようです。

心臓に直接打つのを得意とする先生ばかりではありません。

足などの静脈に打つほうが確実に行うことができるため、そちらを選択する先生も多く、その場合は、心停止までの時間は、心臓に直接打つよりも、わずかですが長くなります。



もう一度書いておきます。

麻酔処分も、安楽死ではありません。

二酸化炭素ガス処分に比べて苦しみが少ないとは言い切れないし、本当のところは、犬たちに聞いてみないと、誰にもわかりません。

ただ、心停止までの時間の短さから言えば、麻酔処分のほうが、まだましではないかというだけのことです。

先生は、可能な限り、今後はすべて麻酔処分にしていきたい、とおっしゃっておりました。





ただ、麻酔処分には、2つの問題があります。



1つは、麻酔処分が難しい犬がいる、ということ。

やはり、獣医師が直接手で行いますから、かなり暴れてしまう犬、咬んでしまう犬は、ガス処分でいかざるを得ないこともあるようです。

危険を伴う場合は、ガス処分となります。



もう1つの問題。

それは、費用です。



二酸化炭素のガスボンベは、1缶3300円。

これで、50頭に使用できますから、1頭あたり66円。

もう少し多く使えないこともないのですが、ガスが残り少なくなってくると、圧が低くなり、二酸化炭素の濃度が薄くなってしまう。

そうすると、犬たちにとって、苦しい時間が長くなってしまいます。

なので、50等程度と決めて使っているそうです。



麻酔薬は、100mlで1万円。

これで5頭分なので、1頭あたりは2000円ほどかかります。

二酸化炭素ガスと麻酔薬で、約30倍の違い。

保健所における動物の殺処分は、すべて税金で行われますから、予算の関係上、麻酔薬のようにお金のかかるものは、なかなか使用することができないのが現状です。

このセンターは、予算からすると、ある程度は麻酔処分を選択することができる、といった状況。

あとで調べてみたところ、政令指定都市は、わりと予算が確保できるからでしょうか、全国的にも、麻酔処分を行っているところは多いようです。

しかし、予算的に厳しい保健所・センターもたくさんあり、まだまだ多くの自治体において、二酸化炭素が使われております。





殺処分のお話の最後に、たずねました。

殺処分を担当する方は、どういった方ですか。

ローテーションなどで決まっているのでしょうか。


「殺処分を行うのは、すべて、獣医師です。」


そう言った後、先生は、獣医さんたちの痛みを想像する私たちの思いを、感じとったのでしょう。

ひとつ呼吸を置いて、


「ローテーションではなく、そのとき手のあいている獣医師が行ないます。

センターの全獣医師が、この仕事を理解して、やっています。

忌避する者は、ひとりもおりません。

後ろめたい職業だと言われることもありますが、わたしたちは、手を抜いた仕事をしたことは、一度もないんです。

それだけは、信念として持っています。」


前方を見据え、そうおっしゃいました。



その目で見てきたこと、身体で感じてきたこと。

何度も何度も、張り裂けるような痛みを経験してこられたのだと思います。

「忌避する者は、ひとりもおりません。」

このお言葉は、今もたびたび、私の中で、熱をもってよみがえります。

人間たちの勝手が、動物たちを苦しめ、またこうして、人間をも、苦しめているのです。

痛みを一手に引き受ける先生の目を、私たちは見つめることができませんでした。

滲んでゆくノートの文字を、ただただ、にらみつけ、拳を握ります。




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最後まで読んでくださった方、心から感謝申し上げます。




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「あたしは、茨城県のセンターで殺処分の運命にあったところ、愛護団体の方が引き出してくれました。

たくさんの人の助けにより、今こうして生きることができています。」




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「みなさん、ありがとう。 精いっぱい、命の灯を燃やします。」


| 愛護センター | 07:07 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

>> EDIT

動物愛護センター 1

みなさま、こんにちは。

ブログお休みまで、あと2週間ほどになりました。

非常につらい記事が多く、申し訳ございません。

お休み前に書き残しておきたい、と思うものは、どうしてもそういったテーマが多くなってしまいます。



私は、「知ること」が、すべてにおける第一歩だと思っております。

知ることで初めて、人の心が揺れる。

知ることで初めて、議論ができる。

ぼやけた感覚の中で「動物たちのいろいろを是正して!」と声高に叫んでも、なかなか世の中は変わりません。

具体的な問題意識をひとりひとりが持つことで、世論となり、法律を変え、社会全体に大きな波を起こしてゆく。

知ることは、きっと、動物たちの未来を変えることにつながると、信じております。



今日から、4~5回ほどのシリーズになる予定です。

このシリーズは、とても迷いました。

どこまで書いたら良いのか、どのように伝えたら良いのか。



実際には、今年の2月の出来事でございます。

2月から、かれこれ9か月、迷い続けてまいりました。







2月某日。

マリリンにお留守番をお願いし、父ちゃんと母ちゃんはある場所へ行ってまいりました。




動物愛護センターです。



マリリンとの出会いがきっかけとなり、これまで、本やインターネットを使い、動物たちが置かれている現状を、少しずつ学んでまいりました。

その中で、疑問に思うことや、知りたいことが出てくるわけですが、ネットの情報は確実性に欠けますし、本は、相応の確実性は担保されるものの、すべてを網羅しているわけではありません。

また、来年の夏に、ひとつ予定していることがございまして、そのために、自分の目と耳で、きちんと現状を知らなければならない、という思いが強くなりました。

全国の自治体の事情はわからなくても、自分たちの住む町の事情なら、知ることができるのではないか。

そう考え、センターに問い合わせをしました。



保護団体の人間でもない者からの突然の申し出に、こちらの目的を測りかねているのでしょう。

受話器の向こうの気配が、若干の戸惑いに揺れています。

「常にオープンになっている“ふれあいコーナー”がありますので、そこにはいついらしていただいても構いませんが・・・。」とのお返事。

そこで、これまで私たちが考えてきたこと、このアクションを起こしたきっかけ、そして、夏に予定している内容と、何のために何を知りたいのか、ひとつひとつお話させていただきました。

すると、「なるほど。よくわかりました。中に入れない部分については、写真による説明をさせていただき、そのほかは、私がご案内しながら説明させていただきます。」と、快く応じてくださいました。

この方は、センターで働く獣医さんでした。

わがままな申し出に時間を割いていただくことに、何度も受話器越しに頭を下げ、日程を調整しました。

そして、当日までに作成したノートを手に、ふたりで伺ってきたのです。




結果として、思っていた以上のことを知ることができました。

情報は、できるだけ多くの方に知っていただきたく、記事にまとめたいと思ったのですが、これが、なかなか難しいものがありました。

知り得た情報を、どのようにまとめたら良いのか・・・。

また、正直なところ、情報をまとめて文章にする作業が、とてもつらいのです。

楽しい記事と違って、こうした内容は、何度も具合が悪くなってしまいます。

そんなときは、書くこと程度で泣いていてどうするんだ!と、自分を奮い立たせました。

動物たちにとっては、読み進めるのを躊躇するおそろしい小説でも、目を覆いたくなるホラー映画でも、ないのです。

知らなければ無かったことになる、フィクションではありません。

これは、まぎれもなく、彼らの現実なのだから。



2月から今日まで長い期間がかかりましたが、しっかり現実と向き合おうと思います。



今回のシリーズは、先生にご助言いただいた、公の場に記す際の注意を踏まえ、また、調べた法律の話も少し交えながら、書いてまいりたいと思います。

どうか、最後までお付き合いくださいませ。



保健所やセンターの事情をすでによくご存知でいらっしゃる方には、改めて悲しみを深くさせてしまうだけかもしれません。

ご自身のご判断によって、スルーなさってください。



以下、マリリン地方のセンターにおけるお話です。

ほかの自治体では取扱いが違ってくると思いますので、それを念頭に置いてご覧いただけると幸いに存じます。






約束の日、センターの中へお邪魔すると、担当してくださる獣医さんは電話中とのことで、しばし待つことに。

その間、ロビーに貼られたポスターや、動物関連のパンフなどを眺めていました。




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あ!これ!

『ひまわりと子犬の7日間』のポスターが

すみません、なんせ2月の出来事なもので

当時は、この映画が公開間近だったのです。




さあ、電話を終えた獣医さんがいらっしゃいましたよ。

作業着のような服に厚手のジャンパーを羽織り、小走りでやって来てくださいました。

あとでお聞きしたら、このセンターでは、動物たちのところに暖房が完備されているので、職員のいる空間は節電し、みな厚着でがんばっているそうです。

私たちと同年代か、もう少し上くらいでしょうか。

そのまなざしを見つめただけで、仕事に一生懸命なのが伝わってくる、そんな印象の方でした。

のちに、この印象は、的中することとなるのです。




まずは、施設内の見学から。

このセンターは、平成18年に、新設されました。

それまでは、保健所だったそうです。

まだまだ新しい建物だからということもありますが、それにしても、とてもキレイであることに驚きました。

お聞きすると、衛生管理はかなり徹底して行ってらっしゃるとか。

この施設内で院内感染のようなものが発生しないよう、犬や猫、小動物がいるすべての空間を、常に清潔に保っておられます。

掃除や消毒の徹底ぶりがハンパなくて、掃除が苦手な母ちゃんは、頭がクラクラしました。



センターの入口の横には、広くスペースを設けた、ふれあいコーナーがあります。



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毎日いろいろな方が、犬と触れ合いに来るそうです。



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この日のふれあい犬は、5匹。

ふれあい犬に選ばれる基準は、やはり人に慣れていて、危害を加えることのない子。

子どもたちがやんややんやと色々なところを触るので、それに耐えられる子がふれあい犬の役になるそうです。

センターに入ってきた犬の中で、そういった条件を満たしている子が選ばれます。

ふれあい犬になるほどではないけれど、ある程度人に慣れている子は、家庭に譲渡されていきます。

ふれあい犬も、希望があれば、もちろん譲渡対象となります。

ふれあうことのできる犬であるだけに、譲渡もスムーズで、たくさんの犬が卒業しているそうです。



たまたまこの日、ふれあい犬から一般家庭に譲渡された卒業犬が遊びに来ていて、先生との再会という感動的な場面に出くわしました。

先生が、「あれ? もも? ももじゃないか!! もも~!!」と突っ走っていったときは、後ろで見ていた私たちも、目頭が熱くなってしまいました。



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ふれあい犬は、柵越しに触れ合うだけでなく、時には、遊びに来た市民と一緒に散歩も行きます。

センターとしては、近所の子どもたちが犬や猫と遊びに来てくれるのもうれしいけれど、やはりできれば、犬を飼ってみたいんだけど触れたことがない、どうしたらいいかわからない、という方々に積極的に来ていただいて、散歩を一緒にしてもらいたいそうです。

触れ合うだけでなく、散歩に行き、犬の力を体感し、そしてうんちの温かさをビニール袋越しに感じてもらう。

飼う前に、ぜひそういった経験をしてもらいたい、とおっしゃっておりました。



かわいいふれあい犬を前にし、当初の目的を忘れ、うっかり長い時間ふれあいまくっちゃった私たちですが、この日のふれあい犬の中に、とても気になる子がいました。



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オムニちゃん。



オムニちゃんという名はあるものの、年齢が年齢なので、みんなから「おばあちゃ~ん!」と呼ばれていました。

真っ黒な身体に、味のある白髪。

ピー玉のようにきれいなおめめが、くるりと光ります。

母ちゃんの実家にいたクルタンを彷彿とさせるその姿に目を奪われたわけですが、気になった理由は、ほかにもありました。

それは、フィラリア症だったということ。

センターに来る犬の場合、フィラリアに罹っている子は、めずらしくありません。

おばあちゃんは、重度だったそうです。

それをお聞きして、聞きたいことリストに入れてあった質問を思い出した母ちゃん、その場で先生にたずねました。

「フィラリア治療は、どういった方針になっているのでしょうか?」

日々進行してしまうフィラリアなので、センターでも治療するそうですが、その方法は、一律、注射による駆虫だそうです。

以前、こちらの記事にも書きましたが、注射による駆虫は、成虫を殺すことができるという大きなメリットがあるものの、かなりの危険を伴います。

ですが、センターの仕事は、すべて税金で行われますので、お金がかけられません。

そのため、一律、注射で駆虫する方法をとっているそうです。



で、おばあちゃんは、年齢的にも相当な危険を背負って、治療に臨みました。

そして・・・

見事、駆虫に成功し、元気に復活してくれたのです!!

やったぁ~!!

おばあちゃん、よくがんばったね~♪

元気になって、よかったね!(^^)!



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「そんなことより、撫でとくれよぉ~!」



オムニちゃんは、その後すぐに希望者が現れ、今は幸せな生活を送っているそうです



ふれあい犬たちとひとしきり遊び、隣へ移動すると、



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猫さんのお部屋がありました。



この猫さんたちも、ふれあい猫で、やはり、人慣れしている子がこの役を担当しているそうです。

私たちが見ていると、さっそく近所の子どもたちがやって来て、撫でておりました。



写真は撮っておりませんが、少しだけ、バックヤードの部分も見せていただきました。

フードを管理する部屋や、食器などの洗い場、そしてシャンプートリミングの部屋などがありました。

食器も常にピカピカ。

きれいに洗って、消毒ばっちりです。

フードも、種類ごとに徹底管理されております。

「フードの寄付は受け付けていますか?」とたずねたところ、このセンターでは一切受け付けていない、とのことでした。

犬の体調管理に合わせてフードの種類を決めていることが、理由のひとつ。

また、値段の高い良いフードなどをいただいてそれをあげてしまうと、譲渡されたあとに里親様のところで困ってしまうことがあるようです。

迎えられたお家で、必ずしも高級フードが食べられるわけじゃありませんから・・・と苦笑いの先生でした。



トリミングルームでは、職員の方が、ちょうど犬を乾かしていました。

みなさん、朝晩犬たちの散歩も行き、掃除に消毒、ごはんの管理など、本当に忙しく働いてらっしゃいます。

犬たちの世話は、業務のほんの一部で、ほかに山ほど仕事がありますから、本当に大変だと思います。

中には、しつけが得意な職員の方がいて、その方にしつけられたことにより、譲渡できる状態になった子が何匹もいるそうで、みなさんのがんばりが、動物たちの命をつないでいるのだと感じました。



施設の見学は、ここで終了です。

犬猫を収容している場所や、負傷動物、咬傷犬の管理の部屋、また処置診察室&手術室、その他検査室、そして処分室など、いろいろな部屋がありますが、そこは、一般の人は入れません。

外からの病原菌を持ち込まない、また、中にある病原菌を外に出さない。

それを、徹底して行っているそうです。



さて、ひと通り見学が終わり、ここからは、先生とのお話に入ります。

長くなりますので、この続きは、次回に。




CIMG4097_R4.jpg
「あたしゃ、昔の記憶はしまい込んだよ。 胸の奥の、うーんと向こうのほうにね!」




CIMG4300_R4.jpg
「みなさん、仲間たちのこと、知ってください。」


| 愛護センター | 07:37 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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