今日も明日も、マリリン日和

センター負傷棟から救出された雑種犬、マリリン。車いすを軽快に乗りこなすマリリンと、夫と、私。家族の日々の記録です。

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とってもいいことだ

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先日のこと。

マリリンと散歩していると、目の前に突然、ご婦人が飛び出した。

足音であるとか、気配であるとか、そういった予感的なものをまったく感じさせずに、静かな家の庭先からいきなりバーーン! だったため、マリリンも私も、ヒョ~! と仰天し、危うくふたりで吠え立てそうになった。

「あらやだ、ごめんなさい。びっくりさせちゃったかしら。そんなつもりじゃなかったの」

茶目っ気たっぷりにご婦人は言った。

「はぁ、いえいえ、こちらこそ」

などと応じつつ、いくらか落ち着きを取り戻す。

ご婦人は、私たちの顔をまじまじと見つめ、うふふ、と笑った。

「あのね、あなたたちのこと、庭から何度か見かけたことがあったの。

声をかけたいと思っていたんだけどね、大抵いつも作業中で手が離せなかったりしたものだから。

だけど今日は良かった、ちょうど作業が終わったところなの。

あなた、いっつもおっきな声でワンちゃんに話しかけて。

ずーっとそうして歩くのね。

最初はどうしたんだろうなんて、ちょっと怪訝に思っちゃったんだけどね、そのうちに、なんだかいいなぁ~って思うようになったの。

だって楽しそうよね、あなた。

とってもいいことだわ」

優雅で淀みない話しぶりに少々気圧されつつ、ありがとうございます、と頭を下げた。

「お庭までいつも声が聞こえてたんですか?

お恥ずかしい……すみません」

「そうよ~、だってとってもおっきな声だもの。

でもワンちゃんがクールでしょう?

最初、一人芝居をしてらっしゃるのかと思っちゃったの、うふふ。

でもいいじゃない、あなたとっても楽しそうだもの」

「たはは…すみません。

あの、ほんと、どうもありがとうございます」

その後、ちょっとした犬談義(と言ってもご婦人は犬と暮らしたご経験はないそうだが)でもり上がり、お礼を最後に立ち去った。



ご婦人はしきりにマリリンをかわいがってくださり、そのことがとてもうれしく、ルンルンと胸を躍らせ散歩を再開させたのだが、何か釈然としないものがむくむくと込み上げてきた。

おっきな声で……

ワンちゃんクール……

一人芝居……

はたと立ち止まった。



確かに私は、いつもマリリンに話しかけながら散歩をしている。

最初から最後まで、ずーっとだ。

それに対し、マリリンは飽き飽きしているのか、散歩とはそういうものだと思っているのか、あるいは、もはや私の声は彼女の中で空気の一部と化しているのか、とにかく、一貫して無視を貫いている。

「マリリンや、楽しいねぇ」というごく一般的な声かけに始まって、時には季節の移ろいを、時には動物たちについて、時には日々考えていることをつらつらと。

一切反応のない彼女の後頭部や背中に向けて、しゃべり続ける。

内容によっては、話すうちに自分の中でもり上がってしまい、多少は大きな声になっていたこともあるかもしれない。

家に帰り着いたときには、若干、声がかすれていることさえある。

そして時には、歌も歌う。

好きなバンドの楽曲を口ずさむこともあれば、

♪ マリマリ マリマリ マリ坊ちゃん

  マリリン マリちゃん マリ坊ちゃん♪

という自作の歌を、延々と歌い続けることもある。

ここ数日は、斉藤和義さんの『カーラジオ』が頻繁に登場している。

たいへん熱くて、ノリのいい楽曲だ。

「あぁ そうだな 世界中 ロックンロールが足りないのかな?」

という歌詞が気に入りで、それを激しく連呼する。



これまで、散歩中の自分の姿というものを、客観視したことがなかった。

確かに、しゃべりすぎていたかもしれないし、歌い過ぎていたかもしれない。

見ようによっては、一人芝居の様相を呈してさえいたのかもしれない……。

考えながら、リードを持つ手に、思わず力がこもる。

犬の散歩ってのは、どの犬飼いも皆そのようなものだと思っていた。

が、もしかすると、私は少しばかり、度が過ぎていたのではあるまいか――。

何か妙に不安になり、マリ坊へすがるような視線を向けると、ワンちゃんクールで徹底無視。

頑なに背を向け、草の中へ鼻を突っ込んでいた。

…………。

まあ、いいか。

だって、楽しいんだから。

うん、とってもいいことだ。



「マリ~! 行くよ~!」

元気よく声をかけ、やわらかな冬の陽を背に、再び歩き始めた。





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| マリリンの暮らし | 07:56 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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